『群論への第一歩』「第9章 作用」ノート
読み方の方針
まずざっと読んでから、頭に返ってきてじっくり読んでいく
章の配置的にもボリューム的にも本書の中心的な内容というよりは、発展的、あるいは次につながる一歩的な内容だと予想
そもそもタイトルに「準同型定理まで」とあるわけだから、この章はその「まで」よりも少しはみ出た部分と言えそう
2024/3/25
まずざっと読む。
ざっと読むだけなら一日で完了。
2024/3/26
もう少し読んでいく。
作用について
群は集合に作用する
数学用語としての「作用」
大雑把に言えば「群の元が集合の元を置換する」と見なすこと
置換群の元は集合X_n = {1,2,3,…,n}の元を並べ替える
復習
置換群→n次対称群の部分群をn次置換群といいます。 対象群→n次置換全体の集合を$ S_n とし、写像の合成を○とすると、$ (S_n,○) は群となります。この群をn次対称群といいます。 置換→nを正の整数とします。X_n = { 1, 2, 3, ……, n } としたとき、X_nからX_nへの全単射をn次置換、あるいはX_nの置換といいます。 n次置換群が、集合X_nの元を並べ替えている(作用している)と考えられる
そうすると、置換群は、集合への作用を通じて、構造や対称性を表すことができる
rashita.iconここは現状イメージできない
置換群ではなく、群Gに一般化し、集合X_nをXに一般化し、作用を明確に定義する
一般化ができれば、何かしらの集合があるとして、その集合について考えたいときに、その集合に作用する(作用しうる?)群を考えることで、その集合の構造や対称性を「群の言葉」で表せるようになる、らしい
準同型は群の構造を保つ写像
準同型fで、G→G'しても、群の構造は保たれている、ということ
群から対象群への準同型に注目する
群→対象群でも、群の構造は保たれている、ということ
そういう写像f(準同型f)を考える
作用を理解するポイント
群Gから集合Xへの対称群Sxへの準同型を定めると、
群Gから集合Xへの作用が定まる
rashita.iconまだ「なるほど、確かに」とはなっていない。
目標として、ここが「なるほど、確かに」となるレベルを目指そう
群の置換表現
まずは復習から
集合X_nからX_nへの全単射を「n次置換」という
全単射なので写像で移されても項目の数は変わっていない。順番を入れ替えただけのようなもの。
そういう全単射を「n次置換」と呼ぶ(全単射は特殊な写像の呼び方であるから、n次置換も写像の呼び方)
「n次置換」全体の集合を台集合とする→写像が集まった(=写像が元である)集合
その台集合と写像の合成を群演算とする群を「n次対称群」という
元が写像なので、群演算も写像の合成
rashita.iconなんとなく「単位」を確認しながら読んでいる感じ
単位は「それがなんであるか」のタイプを示すわけだ。
「n次対称群」の部分群を「n次置換群」という
たとえば、4次対称群S4がある
対称群なので、元は写像、群演算は写像の合成
S_4の一つの元をα(これは写像)とすると、αはX_4からX_4への全単斜であり、4次置換の一つです
rashita.iconそういう風に定義されていたのだから、それはそう。
rashita.iconここまでは問題ない
第6章で正6面体の回転操作が出てきた
回転操作が、4本の対角線を置換していると置かれていた
P_6がX_4と同型であることが確認された
P6からS4への全単射準同型(同型写像)が存在していることが示された
一つ上の話と合わせる
S_4の一つの元をα(これは写像)は、X_4からX_4への全単斜であり、4次置換の一つです
P_6からS4への同型写像がある
つまり、P_6→S_4→X4、という流れが想定でき、それを「群P_6が集合X_4に作用している」と述べたい
rashita.iconあるAがBを並べ替えているとして、そのAと同一のCがあるならば、C→A→Bという流れで「CがBに作用している」と言いたい感じだろうか。
一つ上の話よりもワンステップ増えた形だが、そのワンステップの意義が今は見えてこない
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概念を拡張する
上記はnが付いていたが、それを取って一般化する
集合XからXへの全単射を「集合X上の置換」という
集合X上の置換全体の集合を台集合とし、
写像の合成を群演算とする群を「集合X上の対称群」といい
S_x
で表す
集合X上の対称群S_xの部分群を集合X上の置換群という
X_nはn個の要素を持つ有限の集合だが、Xは無限かもしれない点には注意
写像ρ(ローと読む)は、「群G」から「集合X上の対称群S_x」への準同型
$ ρ:G \to S_x
Gの要素gがあるとして、S_xのρ(g)が、X→Xの置換
「ちょっと一言」
ρの値域(Image ρ)は、ρによるG全体の像p(G)に等しい
$ ρ(G) = \{ α \in S_x | g \in G, α = p(g) \}である
ρ(G)は、S_x上のα で、そのαはρ(g)、つまりGの元gをρで移した値
準同型の定義は?
二つの群(G,*)と(G',*')に対し、写像f:G→G'が次の条件を満たすとき、写像fを群Gから群G'への準同型といいます。
Gの任意の元x,yに対して、
f(x*y)=f(x)*'f(y)
が成りたつ
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群Gから集合Xへの対象群S_xへの準同型
$ ρ :G \to S_x
を考える
準同型は部分群を部分群に移す
rashita.iconNがGの部分群ならば、NをG'に移したN'もG'の部分群、ということ
準同型ρによるG全体の像ρ(G)は、対称群S_xの部分群になる
GもGの部分群だから
すなわちρ(G)は、X上の置換群
rashita.icon置換群:集合X上の対称群S_xの部分群だからそれはそう
ρは、「群Gの構造」を「集合X上の置換群ρ(G)」に移すので、この準同型ρを「集合Xにおける群Gの置換表現」という
ρが単射のとき、pを充実な置換表現という。
ρが忠実な置換表現のとき、Gとρ(G)は群として同型、つまり
$ G \cong p(G)
となる。
準同型ρが単射なら、群Gの情報はρで移された先でも失われない
振る舞いを忠実に移している、という感覚
群Gがどのような群であっても、ある集合Xにおける忠実な置換表現を構成することができる
→ケイリーの定理
忠実な置換表現ρが存在するならば、群Gの性質を調べるときに、ρ(G)の性質の確認することで目的が達成できる
なぜなら、群Gの性質をそのまま移しているのがρ(G)だから(忠実な置換表現の場合に限る)
置換表現ρがあれば、群Gの元gを、X上の置換ρ(g)と見なすことができる。
これを、「群Gは集合Xに作用している」とよぶ
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左作用の定義
(G,*)を群、Xを集合とします。写像
$ α: G ×X \to X
がA1とA2を満たすとき、写像αを「群Gによる集合Xへの左作用」といいます。
A1 集合Xの任意のxについて、
$ a(e,x) = x
が成り立つ(eは群Gの単位元)。
A2 群Gの任意の元g1,g2と、集合xの任意の元xについて、
$ α(g1,α(g2,x)=α(g1*g2,x)
が成り立つ
右作業
A2が$ α(g1,α(g2,x)=α(g2*g1,x)
左作用なら「左から作用する」といい、右作用なら「右から作用する」という
定義を読んでいく
$ α: G ×X \to X
rashita.icon第二章より復習
AとBを集合としたき、この順番でそれぞれの元をペアにしたもの$ (a,b)全体の集合を集合AとBの直積という
G×Xには、(a,b)のような元が集まっている
この元(a,b)がαによって、Xに移される
この場合であれば、わかりやすく元を(g,x)で表すこともできる
ということは、
Gの任意の元gに対し、
αによって、
XからXへの写像が一つ定まる
といえる。
確認
Gの任意の元gに対して、写像$ α_g:X \to Xを
$ α_g:x \mapsto α(g,x)
で定義できるから。
$ a_g(x) = α(g,x)
と定義すれば、gに対して$ α_gという写像が決まることになる
rashita.icon状況をイメージしてみる。
群GがXに作用する。X→Xという写像が「行われる」(というイメージ)
X→Xにおいて、Xの任意の元xは、x'に移される
そのxは(g,x)のようにGの元gがセットになっている。
(g,x)とx'という二つのものがあり
x→x'の移動だけみると、gがx→x'を起こしているようにも見立てられる
実際は(g,x)とαなわけだが
そうした見立ては「gはxをx'に移す」と表現されるらしい
言い換えるならば、写像αは「群Gの任意の元を、XからXへの写像と見なすための写像」といえる
実際gはGの元でしかないが、そのgが一つのキーとなってαを駆動するので、という感じ
A1を$ α_gを使って書き換える
eを群Gの単位元とすると、集合Xの任意の元xについて、
$ α_e(x)=x
が成り立つ
このA1は、「作用αが群Gの単位元eを使って作る写像α_e」は、「X上の恒等写像id_xに等しい」 $ α_e = idx
という条件に等しい
恒等写像は「なにもしない」やつ
X→Xという操作の中で、eがコミットする対象xは、αを通してもxのまま、ということ
同様にA2を$ α_{g1} ,α_{g2},α_{g1*g2}を使って書き換える
群Gの任意の元g1,g2と、集合Xの任意の元xについて、
$ α_{g1}(α_{g2}(x)) = α_{g1*g2}(x)
が成り立つ
rashita.iconなんとなく見覚えのある雰囲気だ
二つの元g1,g2の合成写像は作用αがg1*g2からつくる写像に等しい
$ α_{g1}○α_{g2} = α_{g1*g2}
xをまずg2で移し、それをさらにg1で移した元(左辺)と、xをg1*g2で移した元が等しい
A1とA2によって、Gの元gから作られる写像α_gはすべて、XからXへの全単射、すなわちX上の置換になる
置換表現と作用の関係
群Gの集合Xによる置換表現$ ρ:G \to S_xを考えることと
群Gによる集合Xへの作用$ α:G×X \to Xを考えることは同じ
ρからαが構成できるし、αからρが構成できるから
群の置換表現ρ
$ ρ:G \to Sx
$ ρ:g \mapsto ρ(g)
作用α
$ α:G×X \to X
$ α:(g,x) \mapsto α_g(x)
ρが与えられれば、写像α_g=ρ(g)として、αが定義できる
αが与えられれば、写像ρ(g)=α_gとして、ρが定義できる
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作用の具体例で理解を深める
群Zの集合Rへの作用α
群(Z,+)による集合Rへの作用αを定義してみる
まずnを整数として写像
$ a_n:\mathbb{R} \to \mathbb{R}
を
$ α_n:r \mapsto n+ r
として定義する( α_n(r)= n + r )ということ。
さらに写像
$ α:\mathbb{Z}×\mathbb{R}\to\mathbb{R}
を、
$ α:(n,r)\mapstoα_n(r)
で定義する
すると、αは群Zによる集合Rへの作用になる
rashita.icon復習
Zは整数(zahlen)、Rは実数(real number)
集合Rの要素に対して、α_0は恒等写像(なにもしない)で、α_1は、一つずつ右にシフト、α_-1は一つずつ左にシフト(右に-1シフト)させていく
群Zの集合Rへの作用β
今度は、
$ β_n:r\mapsto(-1)^nr
で定義する。
rashita.iconαはnを足していたけども、こちらでは-1か1を×
1のときは値は替わらず(なにもしない)、-1(nが奇数のとき)は、符号をひっくり返す形でシフトさせる
当然、αとβはイコールではない
群Zの集合Rへの作用γ
今度は、
$ γ_n:r\mapsto r
で定義する
どんなnであっても恒等写像になる
rashita.iconβもγも忠実ではない
nから得られるβ、γが単射ではないから
βは2つ、γは一つの写像に集まることになる
対象群S_nによる集合X_nへの作用
これは確認的内容だった
作用と対称性
群の作用を調べることで、調べたい対象が持つ対称性を群として表すことができる
群の同型を利用して対称性が同じかどうかを調べたり
群と部分群の関係を利用して、対称性の大小関係を調べたりできる
たとえば
正6角錐と正3角柱は異なる対称性を持つ
https://gyazo.com/d8ccf95245a4cbf4f0b63c4b839f6428https://gyazo.com/d82d5d204153006c369d81b7580a9e74
正6角錐は一つの回転軸の周りを60°単位で回す対称性しかない
正3角柱は120°の横回転と上下をひっくり返す対称性がある
回転操作の総数は共に六個だが、作業する群の違いで対称性の違いを表すことができる
例9-6 対称群の多項式全体の集合への作用
例9-7 置換の符号
互換は差積の符号を反転する
群GによるG自身への作用
二項演算
$ *:G×G\to G
群Gによる集合Xへの作用α
$ α:G×X\to X
よく似ている
rashita.iconたしかに。二項演算の書き方によって共通点がはっきりしてくる
XをGとすればまったく同じ
群Gが群G(の集合)に作用している
ケイリーの定理
任意の群は、ある集合の置換群の一つと同型になります
rashita.icon証明をざっと読む
というところで、いったん読了とする。